六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


あたしは不意に、今までの夢の事を思い出した。


まるで、白昼夢のように脳裏に閃いては消えていく。



六花の翼の夢。


確かに、あたしを守る人の背に生えていた。


血の夢。


あたしは、とにかく誰かを助けたくて……。


そして。


瑛さんになだめられた、あの夜の夢。


鉄格子が消えたあと。


翼がむしられ、白い羽根が舞っていた。



全部、今日の事に繋がってたんだ……!



「これは……夢見姫」


岡崎滋の低い声が響いた。


部屋の中には、滋の他に、数人の呪術師らしき人間がいる。


それに、琴さんのお母さんも。


彼等の全員が、相当な術者だという事は、

放つオーラから明らかだった。


首にぐるぐると数珠を巻いた男や、

普通の忍装束の男など、格好は様々だ。


その全員が、こちらをにらんだ。


そのためか読経が止み、静寂が砦を包んだ。


< 616 / 691 >

この作品をシェア

pagetop