六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
あたしは不意に、今までの夢の事を思い出した。
まるで、白昼夢のように脳裏に閃いては消えていく。
六花の翼の夢。
確かに、あたしを守る人の背に生えていた。
血の夢。
あたしは、とにかく誰かを助けたくて……。
そして。
瑛さんになだめられた、あの夜の夢。
鉄格子が消えたあと。
翼がむしられ、白い羽根が舞っていた。
全部、今日の事に繋がってたんだ……!
「これは……夢見姫」
岡崎滋の低い声が響いた。
部屋の中には、滋の他に、数人の呪術師らしき人間がいる。
それに、琴さんのお母さんも。
彼等の全員が、相当な術者だという事は、
放つオーラから明らかだった。
首にぐるぐると数珠を巻いた男や、
普通の忍装束の男など、格好は様々だ。
その全員が、こちらをにらんだ。
そのためか読経が止み、静寂が砦を包んだ。