六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「は、ははは……っ!
久しぶりだ、痛いだなんて思うのは!
やってくれたな、夢見姫!!」
滋は熱っぽい声で笑った。
ボタボタと、血が床に流れ落ちる。
それでも彼は、きちんと両足で立っている……。
「うそ……」
しかも、衰えたとはいえ、
まだわずかに霊力が残っているのを感じた。
「……孝」
「はい、族長」
「さらなる力を、我に」
「……ついに……」
「早くするのだ」
静かな会話が、砦に響く。
太一も、太一を襲った術者達も、
今は事の成り行きを見守る事しかできないでいる。
孝さんは、決心したようにうなずき――。
持っていた杖を、滋に差し出した。
「まさか……っ!
やめろ、義母(はは)上!!」
瑛さんが突然叫んだ。
「……もう、貴方に義母と呼ばれる覚えはありません」
孝さんは、冷たく答えた。