六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


全員が呆然とする中、滋は口を開いた。


「この世は力が、全てだ。

なぁ、瑛……」


「……なに……?」


「お前の父は、俺より力が弱かったのに、

長男だというだけで、次の族長に内定していた。

不公平だろう……?」


その声はもう元の滋の声ではなかった。


より低く、より不気味な響きを含んでいる。


「だから、俺は決めたんだ。

力の差が正当に評価される世を作る事を。

その為に、まずお前の父を陥れてやった。

夢見姫の予言を、考にでっちあげさせてな」


「……貴様……!!

貴様が仕組んだ事だったのか!!」


「気づくのが遅すぎるだろう。

お前の父も、そんな男だった。

すぐ人を信じ、度々危険な目にあっていたな……」


「……っ!」


バキバキ、と瑛さんを縛りつける柱がきしむ。


「ははっ、間抜けな親子よ!


しかしまさか、13年も欺き続けられるとは思わなかったぞ!


お前の母親など、とうにこの世にはおらぬというのに!」



< 636 / 691 >

この作品をシェア

pagetop