六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
全員が呆然とする中、滋は口を開いた。
「この世は力が、全てだ。
なぁ、瑛……」
「……なに……?」
「お前の父は、俺より力が弱かったのに、
長男だというだけで、次の族長に内定していた。
不公平だろう……?」
その声はもう元の滋の声ではなかった。
より低く、より不気味な響きを含んでいる。
「だから、俺は決めたんだ。
力の差が正当に評価される世を作る事を。
その為に、まずお前の父を陥れてやった。
夢見姫の予言を、考にでっちあげさせてな」
「……貴様……!!
貴様が仕組んだ事だったのか!!」
「気づくのが遅すぎるだろう。
お前の父も、そんな男だった。
すぐ人を信じ、度々危険な目にあっていたな……」
「……っ!」
バキバキ、と瑛さんを縛りつける柱がきしむ。
「ははっ、間抜けな親子よ!
しかしまさか、13年も欺き続けられるとは思わなかったぞ!
お前の母親など、とうにこの世にはおらぬというのに!」