六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


え……!?


今、なんて言ったの……?


「なん、だと……?」


「お前の母親は、夫を追って、すぐに自決したわ!

幼いお前を置いてな!」


そんな……!


「――っ!!」


瑛さんの紫色の目が、見開かれた。


「……じゃあ……

俺は今まで、何のために……?」


「瑛さん……!」


「父を殺された恥辱に耐え……、

仲間をも裏切って……

まりあを、泣かせて、傷つけて……!」



術者達の息を飲む音が聞こえた。


ぷつん、ぷつんと切れていくのは。


瑛さんや翼を縛る、蜘蛛の糸や縄なのか。


それとも彼の長年の苦しみなのか。



「……自分の想いも告げる事ができなかったのは、何のためだ!!」



ゴゥ、と音を立て、あたし達を取り囲むように紫の炎が立ち上がる!



「本当なら、連れ去って、守りたかった……

傷つけたくなんか、なかったのに……!

お前は……お前だけは、許さない……!!!」


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