六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
ビシィッ!!
弾けるような音がして、思わず目を閉じる。
連れ去って、守りたかった。
傷つけたくなんかなかった。
それが、蔵の中で、
そして押し入れの中で綱渡りをしていた、
貴方の本当の気持ちだった。
おそらく、最期の時まで隠し通すつもりの……。
涙が、つぅと頬をつたう。
……ううん、泣いてる場合じゃない。
バサ、と音がして、目を開ける。
そこには、拘束から逃れ、翼を広げた瑛さんが立っていた。
「……瑛さん……っ」
「……う、ぐあぁぁっ!!」
彼は、自分の身体に突き刺さったままの苦無を、
次々に抜いて放り投げた。
そして、今にも赤く燃えてしまいそうな瞳で、
滋をにらみ、喉を鳴らす。
「殺してやる……!」
それは、今まで聞いた事のないほど冷たい声だった。
「はは、良いぞ!!
そのまま生命を燃やせば、
先に力尽きるのはお前の方だ!!」