六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


滋の狂った笑い声に、正気が戻る。


そうだ、もう瑛さんの霊力は底を尽きているはず。


立っていられるのは、

翼が瑛さんの命を糧にしているから……!


「瑛さん!!」


止める暇もなく、瑛さんは翼をはためかせ、滋に突っ込んでいく。


「あぁぁぁあぁあっ!!」


紫の炎を纏わせた、拳同士のぶつかりあい。


それは速すぎて、他の者は目で追う事も適わない。


瑛さんは、肉弾戦では常に圧倒されていた滋と、

互角に渡り合っていた。


しかし――。


「っ!!」


一瞬の隙を突き、滋の拳が瑛さんの頬をとらえる!


瑛さんはとっさに身を引き、後ろに飛び退いた。


「ちっ……!」


着地したのは、あたしの隣。


ふらり、とよろけて肩がぶつかった。


「……ぁ、はぁ……っ……」


荒い息が聞こえる。


やはり、怒りで力を出してはいるけど、限界が近いんだ。


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