六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「六花の翼を持っていても、その程度か……
やはり夢見姫の力を手にした方が、確実だな」
「なに……?」
「お前は殺して、夢見姫をいただくと言ったんだ」
地獄の底から響くような、低い声がした。
「させるか……!」
瑛さんの背中で、ミシミシと音がした。
「瑛さん、翼が……!」
破れた忍装束の背中に、ミミズ腫れのような醜い痕が現れる。
翼の根本から、皮膚に根をはるように……。
それは、首へ、顔へと広がっていく。
「ぅ、ぐ、あぁ……!」
「瑛さん!!」
苦しいのか、瑛さんはその場に膝をついてしまった。
それなのに翼は、輝きを取り戻していく。
「…………喰われてる…………」
太一の小さな声が聞こえた。
喰われている。
その表現はぴったりだった。
翼の力が、瑛さんを飲み込んでいく。