六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
《夢見姫……》
突然、頭の中で声がした。
「……あなたなの?」
瑛さんの背に話しかけると、翼はひとりでにバサリとはためいた。
《この術者の力は、尽きかけている。
怒りの力が多すぎるためだ。
私はそれを吸収するしかできない》
翼が、怒りの力を吸収している……?
《私は、この世の恨みつらみを糧にしてしまう。
この世を守るために、産まれたから……
この術者を助けたければ、怒りとは別の力を、私に与えよ》
「別の力……」
《私を産んだ時の事を思い出せ。
そなたは怒りで私を産んだわけではあるまい》
六花の翼が出現した時……。
あの時はただ、瑛さんを助けたくて……。
翼はあたしの思考を読んだように、語りかけた。
《そうだ、その想いを、再び……私に、与えよ!》