六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】




あたし以外には、翼の声が聞こえていないようだ。


時が止まっていたように、瑛さんと滋はまだにらみあっていた。


「……殺してやる……!!」


先に言ったのは、瑛さんだった。


最後の命を燃やすように、紫色の炎があたし達を囲む。


「ダメ、瑛さん、もう怒らないで!

翼は、怒りを吸収して、貴方に侵食してしまうの!」


あたしは瑛さんの正面に立った。


しかし瑛さんは、あたしの肩越しに、

憎い両親の仇しか見ていない。


「ねぇっ、お願い、こっちを向いて!」


無理矢理にその顔を両手で包む。


すると、ぞっとするような視線でにらまれた。


「離せ……!

あいつは、両親を……!

お前まで、なぶって殺そうとしているんだぞ!」


「違う、違う、違う!!

そうして一人で戦うのは、あたしの為なんかじゃない!!

私怨を晴らそうとしてるだけだよ!!」


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