六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「……世話になったな……」
こつん。
あたしの頭に、瑛さんの頭がぶつかった。
「お前には、本当に、世話になった」
「……あたしは、何も……」
「何もしてないとは、言わせない」
瑛さんは頭を離し、思わず見上げたあたしの顔を見返した。
「うまくは言えないが……
……本当に、ありがとう」
優しい声。
優しい瞳。
それが、
本当に別れの時が近づいている事を、物語っていた。
「……行かないで」
「……まりあ……」
「行かないで……」
無理な事はわかっている。
けど、あたしはそう言わずにいられなかった。
瑛さんは、困ったように眉を下げた。
「……すまない……。
村を、放ってはおけない。
母の弔いをきちんとして、村を一族で再建して……。
暗殺稼業を捨てても、一族が暮らしていけるようにしなければ……」