六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「……何年かかるの……?」
「わからない……。
途方もない事を言っているのは、わかっている。
だけど、俺は……。
全部捨てて、自分だけ幸せになるなんて、できない」
瑛さんは、苦しそうに、ぽつぽつと言葉を紡いだ。
「もう……。
わかってたよ。
言ってみただけ……」
「……良かった」
「え?」
「引き留めてもらえなかったら寂しいな、
と思ってたから」
冗談ぽい口調で、瑛さんは笑った。
あたしはそれを見て、ますます泣きたくなった。
「あたしは……言わないよ、
『ありがとう』なんて」
声が、震えてしまう。
「そんな、
永遠のお別れみたいな事、言えない……」
いやだ。
瑛さんの顔がにじんでしまう。
涙がこぼれ落ちないように、必死で唇を噛んだ。
「……バカ、痛そうだ。
放してやれ……」
瑛さんの優しい声がした。