六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
天気予報通りの、曇天。
その下で、あたしはウェディングドレスを着ていた。
コルセットで縛られたお腹が苦しいけど、
濃いメイクで必死に笑う。
『皆様、模擬挙式はいかがでしたか?
この後、試食会をこちらの広間で行いますので……』
同期がマイクを持ち、お客様を誘導していく。
そう、あたしの仕事は結婚式場の営業だ。
カッコよく言えば、ウェディングプランナー。
だけど、模擬挙式のようなイベントの時には、
モデル代をケチりたい社長の意向で。
あたしは、花嫁役をやる事が多かった。
新郎役も、同僚の営業マンだ。
「やー先輩、今日も綺麗っすね。
見飽きましたけど」
「ねー。
このドレスも着すぎて、もう感動ないよね」
ヒソヒソと、軽口に軽口で返す。
ふとその横をお客様が通り、慌てて笑顔をふりまく。