六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



天気予報通りの、曇天。



その下で、あたしはウェディングドレスを着ていた。


コルセットで縛られたお腹が苦しいけど、

濃いメイクで必死に笑う。


『皆様、模擬挙式はいかがでしたか?

この後、試食会をこちらの広間で行いますので……』


同期がマイクを持ち、お客様を誘導していく。


そう、あたしの仕事は結婚式場の営業だ。


カッコよく言えば、ウェディングプランナー。


だけど、模擬挙式のようなイベントの時には、

モデル代をケチりたい社長の意向で。


あたしは、花嫁役をやる事が多かった。


新郎役も、同僚の営業マンだ。


「やー先輩、今日も綺麗っすね。

見飽きましたけど」


「ねー。

このドレスも着すぎて、もう感動ないよね」


ヒソヒソと、軽口に軽口で返す。


ふとその横をお客様が通り、慌てて笑顔をふりまく。


< 673 / 691 >

この作品をシェア

pagetop