六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「いないよ」
「えっ?」
「僕達には、母しかいない」
いない?
お父さんも亡くなってるって事?
意味がわからずにいると、留衣さんは信じられない事を話しだす。
「夢見姫は念じるだけで、子を授かる事ができるんだ」
「……!!」
絶対、嘘だと思った。
からかってるんだと思った。
しかし、留衣さんの目は真剣だ。
「……どういう事か、わかる?」
「え……っ」
「夢見姫は、それだけの力がある。
もし夢見姫が、誰か一人の男に恋でもしてごらん。
……世界は、その男のものになる」
「まさか、そんな……っ」
「だから代々の夢見姫は皆家に閉じ籠り、処女のまま子を産み、育ててきた」
ぞわり、と冷たいものが背中を走る。
そんな人間が、いるわけない……。
あたしだって、子供ができる仕組みくらいはわかっている。