六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「それはそうだが。
浮世のゴタゴタが無いから、プラスマイナスゼロだろう」
「ゴタゴタって……」
「友達がいれば喧嘩もする。
恋人がいれば失恋もする。
働きに出れば、セクハラを受ける。
結婚したら、浮気されて離婚なんて事もある。
そうだろう?それが夢見姫には一切、ない。
あるのは他人からの信頼と期待のみだ。
素晴らしいじゃないか」
「そ、そうですけど、でも!」
「……シッ」
あまりの極論に反論しようとしたら、
岡崎さんの厳しい目に制止されてしまう。
「……チッ、油断したか」
耳をすませたあと、岡崎さんは突然立ち上がった。
「おい起きろ、へっぽこ陰陽師!」
「ふわっ!?」
突然後ろから頭を叩かれた太一は、目を白黒させて起きた。
隣の清良もそれに続く。
「な、何だよぉ」
「この車両に結界を張れ。
常人から見えないようにだ。
できるか?」