六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「待て……!」
岡崎さんが苦無をにぎり、彼の胸を突き刺す。
しかしそれは、彼を貫くことはなく……。
霧の中に、その姿は消えていった。
「……チッ」
霧が晴れた後、炎も消えて。
岡崎さんが足元に落ちていたお札を、踏み潰す。
所々焼け焦げていたそれは、岡崎さんの足下で粉々になった。
「……もう結界を解いても大丈夫だ。
ご苦労だったな、陰陽師」
太一に話しかけた岡崎さんは、
いつものつまらなさそうな顔に戻っていた。
「陰陽師じゃねえ。
俺には安城太一って、立派な名前があるんだ!」
正直今まで怖がっていた太一は、
自分を奮い立たせるように大きな声を出す。
「どうでもいい。
疲れた。
寝かせてもらうぞ」
岡崎さんはマイペースを崩さない。
また元の座席に座り、目を閉じてしまった。