シャクジの森で〜青龍の涙〜
星が瞬き二つの月が浮かぶ静かな夜。
いつもは大きな山があるベッドの上も、今夜は小さな山が一つだけ。
開けたままのカーテンからは月明かりが優しく差し込み、一人眠るエミリーを照らしていた。
髪は夜空の星を集めたようにキラキラと輝き、いつしかベッド全体が柔らかな光を放ち始めた。
エミリーのあたたかなオーラが部屋全体を満たしていく――――
「――――ここは・・・・?」
エミリーは、信じられない思いで立っていた。
まわり360度見渡す限りひしめくように木が生えていて、見上げれば枝の隙間から眩いほどの光が洩れてくる。
疑いようもなく、ここはとてもきれいな森だ。
エミリーは木々の間にある、細い道の真ん中にいた。
獣道とは違う、草が生えていないちゃんと手入れされた人工的な道。
まわりに立ち並ぶ木はどれも同じで、下草も平凡なものが葉を長く伸ばして繁っている。
この世界で見知っているシャクジの森とは全く違う、普通な感じの森だ。
どうして、こんな見知らぬ場所にいるのだろうか。
ワケが分からずぼんやりと立ち尽くしていると、一匹の小さな動物がエミリーの横を通り抜けていった。
長い尻尾をピンと立てて、お尻を振りながらテテテテテと歩いていく。
「あれは、猫よね・・・?」
白とグレーの長い毛並みはふわふわで、シャルルに似ているとても奇麗な猫だ。
その猫が、1メートルほど先でピタリと止まってエミリーの方を振り返り見た。
なので、つい、つられてエミリーも後ろを振り返り見る。
けれど、背後は前方と変わらず長い道と木立があるだけで、エミリーの他には人も動物も何もいない。
視線を元に戻すと、猫は、エミリーをじっと見つめていた。
その金色の瞳は暫く動かないでいたけれど、ふい、と前を向くと再びしなやかに歩き始めた。
「あ、まって。あなたはどこにいくの?」
何だか着いて行かなくてはいけない気がして、エミリーは懸命に猫の後を追った。
爽やかな風が木の葉をさわさわと揺らしていく。
柔らかくて心地好い風が、エミリーの頬と髪を撫でていく。とても気持ちが良い森だ。
やがて、ピチョピチョと水が流れるような音と一緒に、機械的な音と女性の声が聞こえ始めた。
歩きながらじっと耳をすませていると、それは緩やかな強弱を伴っていて一つの美しい旋律を形づくっていた。
「誰かが、歌を歌っているのだわ」
猫を追うのも忘れ、エミリーは惹き込まれるように声の元の方へと向かった。
道を外れて長い草をかき分けて進めば、一人の少女が川辺で蹲って何かをしているのが見えた。
いつもは大きな山があるベッドの上も、今夜は小さな山が一つだけ。
開けたままのカーテンからは月明かりが優しく差し込み、一人眠るエミリーを照らしていた。
髪は夜空の星を集めたようにキラキラと輝き、いつしかベッド全体が柔らかな光を放ち始めた。
エミリーのあたたかなオーラが部屋全体を満たしていく――――
「――――ここは・・・・?」
エミリーは、信じられない思いで立っていた。
まわり360度見渡す限りひしめくように木が生えていて、見上げれば枝の隙間から眩いほどの光が洩れてくる。
疑いようもなく、ここはとてもきれいな森だ。
エミリーは木々の間にある、細い道の真ん中にいた。
獣道とは違う、草が生えていないちゃんと手入れされた人工的な道。
まわりに立ち並ぶ木はどれも同じで、下草も平凡なものが葉を長く伸ばして繁っている。
この世界で見知っているシャクジの森とは全く違う、普通な感じの森だ。
どうして、こんな見知らぬ場所にいるのだろうか。
ワケが分からずぼんやりと立ち尽くしていると、一匹の小さな動物がエミリーの横を通り抜けていった。
長い尻尾をピンと立てて、お尻を振りながらテテテテテと歩いていく。
「あれは、猫よね・・・?」
白とグレーの長い毛並みはふわふわで、シャルルに似ているとても奇麗な猫だ。
その猫が、1メートルほど先でピタリと止まってエミリーの方を振り返り見た。
なので、つい、つられてエミリーも後ろを振り返り見る。
けれど、背後は前方と変わらず長い道と木立があるだけで、エミリーの他には人も動物も何もいない。
視線を元に戻すと、猫は、エミリーをじっと見つめていた。
その金色の瞳は暫く動かないでいたけれど、ふい、と前を向くと再びしなやかに歩き始めた。
「あ、まって。あなたはどこにいくの?」
何だか着いて行かなくてはいけない気がして、エミリーは懸命に猫の後を追った。
爽やかな風が木の葉をさわさわと揺らしていく。
柔らかくて心地好い風が、エミリーの頬と髪を撫でていく。とても気持ちが良い森だ。
やがて、ピチョピチョと水が流れるような音と一緒に、機械的な音と女性の声が聞こえ始めた。
歩きながらじっと耳をすませていると、それは緩やかな強弱を伴っていて一つの美しい旋律を形づくっていた。
「誰かが、歌を歌っているのだわ」
猫を追うのも忘れ、エミリーは惹き込まれるように声の元の方へと向かった。
道を外れて長い草をかき分けて進めば、一人の少女が川辺で蹲って何かをしているのが見えた。