遊びじゃない
外の冷たい空気で酔いを醒ましたいところだったけど、用意周到なタクシーはもう店の前に横付けされていて、その冷気を満足に吸い込むことなく十分に暖めら
れた車内に乗せられる。
行く先は…迷いなく、麻生さんのおウチの住所が告げられる。
予想はしていたし、モチロンそのつもりで準備もしてきたけれども。
これってセフレと変わらないんじゃないかって考えてしまう。私が求めているのは所謂一般的な恋人関係であって、体の疼きや寂しさを埋めるための体だけの関係じゃあない。
でも、セフレだったらわざわざ食事になんて行かなくても、直接家に行ったりホテルで事を済ませるだけでもいいような気がして、じゃあやっぱり違うのかも。
そもそもセフレってどうやって成るんだろう。
恋人同士なら「付き合おう」なんて言われたらそれで確実なんだろうけど、「セフレになろう」なんて文句あまりきいたことがない…というか、周りでは1人も聞かない。
じゃあやっぱり「付き合おう」って言葉がなくて体を重ねるだけなら、それはセフレなんだろうか、なんて回らない頭でぐるぐる考えているうちにタクシーは見覚えのある住宅街でスピードを緩める。