遊びじゃない

妊娠ってほんとに大変なんだな、好きな人の子供しかそりゃあ産めないよね、なんて考えながら会社まで歩いている途中でメールの受信音が鞄から聞こえる。

『昼休み連絡するから、吃驚しないで』と簡素なメール。

私も素っ気無いほうだと思うけど、美織にいたっては絵文字なんて見たことがない。

吃驚するって…まさか、もう産まれちゃったとか?
え、でも、まだ産休にも入ってないわけだから、まだまだ早いはず。
確か4月の中頃の予定だった気がするし、何よりまだベビードレス買ってない!

赤ちゃんと美織が心配だったけれど、連絡くれるっていうくらい余裕がありそうだし、何か別のことかと思いながら出社すると、朝礼で部長からみんなに伝えられる。

「え~、山崎君だがな、3月からの産休予定だったが今日からもう休みに入ってもらうことになった。医師から安静指示がでたようでな、病欠だ。引継ぎはもう終わってるだろうから―」

グダグダ続く部長の声は既に聞こえず、ここ数日の美織を思い出しながら、もっとフォローすればよかったと後悔ばかりが募る。

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