遊びじゃない

入院なんてあまり身近に感じない言葉に余計に心配になって大丈夫なのっ
て聞こうとすると、察したように大丈夫よ、と笑い声が聞こえる。

「ダルかったのも、妊娠中毒症によるものだろうって言われたわ。若干血圧が高くなってきてたし、ベビーもちょっと小さめみたいだし、安静入院ってコト。」

その中毒症ってのもよくわからなかったけど、血圧や赤ちゃんが小さいことは意味がわかるだけにどうしようもなく不安になる。

「でも…ずっと入院?産まれるまで?」

その後に続けようとした言葉も美織が察してまたクスクス笑う声が聞こえる。

「気持ちはありがたいけど、家族以外は面会できないんだって。ほんとは産後もダメだけど、妹だとか記入して面会においでよ。」


いつもと変わらない美織の口調と笑い声に、少しばかりは安心して通話を終える。

今は美織には赤ちゃんと自分の体だけ考えていてほしいから。
だから麻生さんのことは自分でなんとか決着つけないと。


…って、決着といってもこのまま連絡がなければそれが答えっていうコトで。


歳を取ればとるほど臆病になって、空気が読めない女だと思われるのが嫌で「私たちってどんな関係?」なんてことも聞きづらくなっていく。

自分から連絡することさえも躊躇して、頭の中だけで結論付けるクセがついてしまった自分に、少々嫌気がさして溜息が出る。

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