遊びじゃない


いつも通り定時には仕事が終わり、次々とエレベーターに吸い込まれていく人を順番待ちしながらぼんやりと見送る。
繰り返される週初めの月曜日なんて、みんな早く帰ってゆっくりしたいはずで。

いつもなら我先にと帰路に着くはずなのに、何故か今日は足が重い。

上から降りてくるエレベーターに麻生さんが乗っていないかと少しは期待して乗り込むけれど、

扉が開いて最初に見えたのは草食系中野の人の良さそうな顔。

私と目が合って、さらに眼鏡の奥を細める。満員のエレベーターの中で、背中を向ける形で密着した中野のシャツからは洗濯の匂いがして、子供かよって可笑しくなる。

「お疲れ様。」

窮屈な箱から開放されて、中野はにこにこと微笑みながら隣に並ぶ。

「おつかれ。今日は定時なんだ?」

「うん、月曜だしね。」

そういえば同じ沿線だった中野と、肩を並べて歩き出す。

細身だけどひょろりと高くて、私の頭にちょうど肩が並ぶ格好で、ふと、麻生さんも一緒くらいだって思い出す。

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