遊びじゃない

「…営業の人も月曜日はみんな早く帰れるの?」

麻生さんとは言えないけど、さり気なく話題を振るけれど、聞いたってどうせ行動できない自分がいる。

「う~ん、そうだな…個人差あるんじゃないかな。あんまり周りを気にしないから、よくわかんないけど。直帰の人も多いし、この時期は異動の人なんかが引き継ぎ準備とかで残ってたりするし。」

「…ふ~ん…異動か。じゃあ中野は今回免れたんだ?」

「そうだね、帰ってきたばっかだしね。」

若いうちは基本2~3年に1度転勤話が持ち上がるうちの会社。
確か中野は福岡に2年、名古屋に2年行っていたはず。

「今回は僕らの同期はいないよ。」

「そっか…誰が異動?」

興味があったわけじゃなくて、ただ話の流れで聞いただけ。

人事異動の告知はもちろんうちにだって届いていたけれど、みんなが目まぐるしく異動を繰り返す中でいつしか興味は完全に失せてしまって、美織も私もランチの合間にさえそれについて話すことなんてなかったほどだったから。


< 89 / 266 >

この作品をシェア

pagetop