遊びじゃない

「えっと、上からいくと、麻生さんに小林さん、今中くんと―」

最初に告げられた名前に思わず足が止まってしまって、3歩ほど前に進んだ中野が怪訝そうに後ろを振り返る。

「…どうかした?」

立ち止まったまま険しい顔をしているであろう私に、ゆっくり踵を返して近寄りながら覗き込む眼鏡の奥は、ほんとうに心配そうに揺れている。

「ううん…なんでもない。」

そう答えながらも頭の中は疑問符だらけで。


まだまだ冷たい風がコートの裾を翻しているのに、ポケットの中の掌にはじっとりと汗が滲む。
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