CALL ME,CALL ME
Please !
■
時刻は深夜25時―
真夜中のオフィスに、私達以外に人はなし。
仕事に忙殺される毎日で、正直ココロも身体も限界だった。ここは神聖なオフィスで、こんなの絶対間違っていると知っている。
ちょっとくらいご褒美を貰ってもいいかなって、そんな軽い気持ちでキスしただけだ。フレンチなやつを、一度。
なのに。
「…先輩、どうして人が必死に堪えてるものを、そんな風に易々と壊せるんですか」
じとりと恨みを孕んだ漆黒の瞳が、私を睨んだ。
彼は3つ年下の後輩で、私の恋人。
最初こそ、その美麗な容姿に、ただの顔採用かと毛嫌いもしたのだけれど。一緒に仕事をするうちにそんな偏見はすぐに消えた。
彼は完璧に仕事をこなした。
けれどその実、人に頼ることが苦手で、決して努力を見せたがらないということに気づいたのだ。
涼しい顔して無理を重ねる姿を見るに見かねて、不器用な後輩の相談相手となり、今の関係に至った。
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