届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「そうじゃなくて。中学生が贅沢しすぎ。」
「贅沢じゃないもん!!」
「ヘリコプターなんて、オレさえ乗ったことないよ?」
「お兄ちゃんの高校の同級生が、初フライトの実験台に、って呼ばれただけだもん。」
「実験台か…それは嫌だな。」
「でも、すごくキレイだったよ?」
「よかったな。じゃあ、花火はナシで。」
ニッコリと笑った。
「ええ~?ヘリコプターと花火は別!!」
ぷ~っとホッペがふくらむ。
「…っとに。ほら。」
そう言ってあきれながら、ジャケットのポケットから小さな封筒を差し出した。
「何これ?」
手に取って中身を出してみる。
パラパラっと4つの種が出てきた。
「昨日、退院した子がくれたんだ。ひまわりの種。」
「自分だって、季節外れのものを持っているじゃん。」
花火が却下されたのが納得できなくて。
イヤミのようにチラッと霧生くんの顔を見た。
「去年の夏に咲いたひまわりの種を退院のお礼にってくれたんだ。小児科って、長いと学校も行けないだろ?だから、病院の庭の花壇で子供たちと花を育ててるんだよ。体だけじゃなくて心のケアもね。」
「そんなことも霧生くんやっているんだ。」
看護だけじゃなく、そういうのも仕事の内容にふくまれていたんだ。
ちょっとビックリ。
「ああ。外に出て遊べない子や、毎日、薬や点滴、痛い検査だろ?少しでも入院が楽しくなればと思ってね。」
「そんな大事なもの、もらっちゃっていいの?」
「うちはアパートだから植えるところもないから。このまま放置されるより、誰かに育ててもらえた方がいいと思ってさ。」
「じゃあさ、このひまわりがいっぱい咲いたら、花火…しよう?」
「…わかった。」
ほんの少し、間があったけど。
微笑みながらうなずいてくれた。
そして、霧生くんの手を取ると、一粒だけひまわりの種をてのひらに置いた。