届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
19 失ったもの
どれくらい泣いていた?
霧生くんの涙の落ちる速度が少しずつ遅くなった。
「…昨日、実家に帰っていたんだ。」
ポツリと話し始めた。
「冬槻先生が?」
「ああ。おじさんの1周忌で…家族だけだって話で、オレはこっちに残った…それが間違いだった。」
あたしの手を握る力が強くなった。
「事故か何かに巻き込まれたとか?」
霧生くんの手を優しく握り返した。
「…いや。」
霧生くんの口が重くなった。
「何があったの?」
「冬槻の妹から連絡来て…。」
「それで?」
「殺されたって…乱暴されて…」
「…………。」
言葉にならなかった。
あの冬槻先生が?
3日前まで笑っていたのに?
「…ごめん。あたし何にも言えなくて。」
頭が真っ白になって、霧生くんにかける言葉さえ見つからない。