届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
20 ウソつきと一人ぼっち
いつの間にか窓の外には、朝日が昇り始めていた。
カーテンからのぞく空が、サーモンピンクが混じり始めて。
朝日が差し込む部屋。
夜には気付かなかったけど、疲れきったかのような霧生くんの顔。
まるで人でなく心のない人形みたい。
大事な人を亡くす痛みに、ひたすら耐えていたのが分かる。
目を腫らして、悔しさで唇を噛みしめすぎて血が出ていた。
その血を優しく拭(ぬぐ)うと、霧生くんはニッコリと笑った。
「もう大丈夫だ。ありがとう。」
「大丈夫じゃないよ!!今日は1日一緒にいるよ。」
「仕事に行かなきゃ。子供達が待ってるから。」
「こんな時くらい病院休みなさい!!」
まるで母親のような口調。
「こんな時だから仕事するんだよ。色々と、考えなくてすむからさ。」
霧生くんがクスリと笑って、優しくあたしの頭をなでた。
「霧生くんがそう言うなら…」
渋々、納得するしかない。
「チワワは、学校ちゃんと行くんだぞ。」
「大丈夫!!帰ってきたら、病院に顔を出しに行くね。」
「分った。待っているよ。」
約束をすると、あたしは霧生くんの部屋を後にした。
何か心に渦巻(うずま)いている不安はあったけど…。
霧生くんが消えてしまうんじゃないか?
だけど学校から帰ったら、病院で会う約束をしたから大丈夫。
そう自分に言い聞かせていた。