届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

いつもの激しさじゃない。

何かをぶつけるような激しさで。

お兄ちゃんの激しい感情を見たのは初めてだった。

何かに憑りつかれているかのように。

鋭い視線に、まるで冷たい刃物で突き刺すように。

あたしの息遣いのテンポと。

お兄ちゃんの息遣いのテンポがズレてる。

体のテンポは合っているのに。

あたしを壊してしまうかのよう。

こんなに、怖いくらいのお兄ちゃん初めてだ。

あたしが自分の部屋で寝てなかったから?

何か怒っているのかと思ったけど。

体の中に放たれた熱はいつも以上に熱く感じて。

いつもの優しいお兄ちゃんに変わる。

それが毎日繰り返されていって。

そんな生活にも慣れ始めようとしていた。

家に帰ってきて、もうすぐ1ヶ月過ぎようとしている。

大人しいあたしに、家政婦さんの警戒も緩くなっていた

お兄ちゃんがいなくても、家の中は自由に歩けるようになっていた。

「…なんですよ。」

家政婦さんが玄関で誰かと話している。

リビングでご飯を食べているあたしの耳に、相手の声は聞こえない。

家政婦さんの声だけは何とか聞こえた。

「病院の方に行って頂ければ…。」

家政婦さんの声だけで判断するなら、病院の関係者?

お父さんを訪ねてきた人だと思った。

「…です……霧生さん…。」

一瞬、耳を疑った。

いま家政婦さん

『霧生』

って、言ったよね?

霧生って…

あの霧生?

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