届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
26 脱獄
ここ最近、お兄ちゃんに忠実だった。
そのおかげで、家政婦さんに隙が出ていた。
1ヶ月前までは、数分ごとに様子を見に来ていた家政婦さん。
今では2時間に1回。
お兄ちゃんの部屋にいるといえば、何も言われないし干渉もしない。
脱走できるチャンスだと思った。
この機会を逃したら、霧生くんに二度と会えなくなる。
会って全てを謝りたかった。
許してくれないかもしれない。
だけど、霧生くんに一瞬でもいい。
『あたしのせいで、ごめんなさい。』
それだけ言いたい。
元気になった霧生くんの顔が見たい。
あたしのワガママかもしれない。
自己満足だって言われるかもしれない。
それでも、霧生くんにもう一度会いたくて仕方ない。
あたしはここから絶対に脱走しなきゃ。
乾いてひび割れた心が、水を得たように潤っていく。
強い思いが、あたしの原動力になっている。
霧生くんが、あたしに生きる力を与えてくれた。
そんな気さえしてしまう。