届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
きっと、お兄ちゃんの様子がおかしかったのも、霧生くんがこの街に戻ってきたのを知ったからに違いない。
それが分った今、あたしがすべき事。
ここから逃げ出す事!!
家政婦さんは、いつも通りにしておけば何も疑わない。
問題は監視カメラ。
撮影映像は、お兄ちゃんの部屋のパソコンに録画されている。
もし、パソコンの録画画像が携帯にでも送られていたら。
脱走がすぐにバレちゃう。
パソコンさえ壊れてしまえば、録画画像も見れないし。
脱走しても時間は稼げる。
ピンとあたしの中に閃いた。
お兄ちゃんの部屋に何食わぬ顔をして侵入し、わざとパソコンに水をこぼした。
買い換えるか。
修理に出す以外、パソコンが使える事はない。
そこに目を付けてみた。
案の定、電源は入らない。
自分の部屋に戻ると急いで着替えた。
ここから脱出するには、この滑り落ちそうな屋根伝いに降りるしかない。
イチかバチかの賭け。
窓を開けると、久しぶりの外の匂いが部屋中に充満した。
太陽の匂いを体中に送り込むように。
大きく深呼吸した。
「よしっ!!」
気合を入れて、一歩、窓の外に足を踏み出した。