届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
33 打ち砕かれた思い
霧生くんの実家まで、2時間はかからなかった。
駅からも歩いて30分くらい。
住宅街の中にある、想像を超えた大きな真っ白な家。
まるで、何かのアトリエのようで。
ペットのためのスペースなのかな?
サンルームも、リビングから隣接した場所にあるし。
庭先のコートテラスへもつながっている。
斜め向かいには、黄色いカワイイ大きな洋風作りの家が見える。
なんとなく、表札に目を向けた。
…そこには
『冬槻』
の表札がかかっていた。
ここが、冬槻先生の実家なんだ。
本当に、家同士が近いんだ。
少し感心しながら見上げていた。
「何か用事かしら?」
後ろから、急におばちゃんが声を掛けてきた。
「あっ…えっと…冬槻先生にお世話になって…」
急なおばちゃんの出現に、なんて答えていいのかな分からない。
戸惑いながら言葉を探していると。
「あら、楓ちゃんの患者さんだったコ?」
「…はぁ?楓ちゃんて…」
小さく首を傾けながら。
眉が微かにゆがむ。
必死に思考を巡らせても、楓なんて人物は思い当たらない。
もしかして、家を間違えた?
でも、こっそり病院で調べた実家の住所はここで間違いはない。