届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
35 秀一
痛い体を引きずるように、なんとか新幹線に乗ってホテルまで帰ってきた。
新幹線に乗っている間、思った事があった。
あたしがあの日、屋根裏の窓から見た人影は霧生くんなんかじゃなく、あのお兄さんだったのかな?
なんて…
あの後ろ姿も、もう、うっすらとしか思い出せない。
それに今は、痛みで頭が回らない。
ただ、これだけは決めたことがある。
『嫌われてもいい。だけど、これ以上人を不幸にしたくない。』
霧生くんは死んじゃったかもしれない。
だけど、ハッキリとした証拠がないんだから、どこかで生きているって思いたい。
きっと、いつか会いたい…
そう思う事で、胸の奥の消せない罪の痛みを和らげる気がした。
身体は痛むけど、骨は大丈夫だったみたい。
だけど打ち身がひどくて。
数メートルも投げ飛ばされたんだもん。
これで済んで良かったくらい。
それでも、一週間はホテルのベッドで過ごした。
痛みも引いて、久しぶりに街に出てみる事にした。
尚吾がどんな嫌がらせしてくるか分らないけど。
なんとなく、いつものファミレスに行ってみた。
普通に入れる。
どうしちゃったの?
なんか逆にそれが怖くなって。
目だけキョロキョロして。
何が起こるのか?
ビクビクしていた。
そんな心配は目の前の光景で、一気に吹っ飛んだ。