届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
38 幻でも…会いたい人
尚吾のいるビルに着くと、呼吸を整えながら階段を登って行った。
フロアのドアに手をかけ、大きく深呼吸すると勢い良くドアを開けた。
「おっ!!!」
ビックリした顔の尚吾が1人立っていた。
いつものメンバーはいないみたい。
ツカツカとフロアに入って行くと、ソファに座る尚吾の目の前に立った。
「ねぇ、偽造の身分証作れない?」
ジッと目を見ながら、開口一番直球で聞いた。
何を話していいかも分からないし、この間のこと。
聞かれるのも嫌だから。
早く用件を済ませたいのが9割。
この場に居たくないのが1割。
尚吾と2人きりなんて、何をされるか分からないもん。
「亮太なら作れるけど…どうしたんだ?」
いつもと変わらない態度。
突然の言葉に少し驚いているくらい。
てっきり、あの事で軽蔑されていると思ったのに。
「あたしが、作って欲しいんだけど。」
「うぁ~ん。いいけど。用途は?」
「保険証と学生証。出来るんだったら、戸籍も欲しいくらい。」
「戸籍は微妙だな。なんでそこまで?」
「…。」
ずっとホテル暮らしも限界があるし。
年もごまかせれば、部屋も借りられる。
単純なはずの理由さえ言えなかった。
尚吾の目を見たまま、言葉が出てこない。
きっと、尚吾には怖いくらい張りつめたあたしの空気が伝わっていると思う。
それなのに何も聞かず
「…わかった。亮太にメールしておくよ。」
すぐに携帯を取り出し亮太にメールをしてくれた。