届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

男の人が傘を差しながら足早に歩いてきた。

雨と傘で顔なんか分からないけど。

霧生くんだ!!

あたしの直感が働く。

背格好しか分からないけど。

間違いなく霧生くんだ!!

「霧生くん!!!」 

大きな声で呼ぶと、急いで駆け寄った。

男の人は立ち止まり、ジッとこっちを見ている。

思いっきり抱きつくと、涙が溢れて止まらなかった。

「会いたかったよ!!…ずっと探して。」

霧生くんである事を確認するかのように、雨で冷たくなった両手で顔に触れた。

「チワワ…チワワなのか?」

ガサッ……。

ビックリして傘を落とし、あたしの頬を両手で掴んだ。

「…そ……だよ…。」

涙で上手く話せない。

泣き崩れて立てないあたしを、霧生くんは強く抱きしめてしっかり支えてくれた。

あたしも、強く強く抱きしめた。

やっと…

やっと、霧生くんに会えたんだ!!

霧生くんは泣き崩れるあたしを、部屋の中まで連れていってくれた。

あの頃よりも部屋の中は広くて。


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