届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
43 ひと時の時間
そんな状況なのに。
霧生くん…冬槻先生も。
あたしに普通に接してくれたことに驚いた。
そして、小さな胸の中にいっぱい溢れたのは。
霧生くんと冬槻先生の温かい優しさだった。
だから、あたしの瞳からは自然と涙がこぼれた。
「…あたしは…あたしは、霧生くんが居なくなって、悲しくて探して、謝りたくて…ずっと…ずっと…。」
唇は震えているのに、セキを切ったかのように言葉が止まらない。
ズズズッと鼻水をすすりながら。
とぎれとぎれの言葉でうまく伝えきれない思いなのに、霧生くんは何も言わずに抱きしめてくれた。
「ありがとう。ごめんな。」
そう言って、優しく頭を撫でてくれた。
霧生くんの温かさ。
霧生くんの匂い。
霧生くんの心臓の音。
全てが懐かしくて嬉しかった。
「もう、どこにも行かないよね?」
涙をいっぱいに溜めながら、霧生くんの顔を見上げた。
「…ああ。」
ニッコリと霧生くんは笑った。
その晩、どれくらいぶりだろう?
霧生くんと一緒にご飯を食べに行った。
雨も止んで霧生くんのバイクで出かけた。
久しぶりのバイクの後ろは、懐かしさよりも霧生くんがここにいるっていう実感できる嬉しさでいっぱい。
前よりもしっかりと抱きつき、離したくはなかった。
着いた先は、やっぱり霧生くんだ。
「ねぇ、せっかく会えた記念なのにファミレス!?」
アヒルのように、口をとがらせている。
霧生くんの眉がピクリと動く。