届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「……………。」
返事のない霧生くん。
「霧生くん?」
てっきり、怒っているのかと思った。
見たくもない花火に付き合わされて。
それだけじゃない。
いきなり現れたあたしのワガママに振り回されて怒っているのかと思って。
ゆっくりと顔を見上げると、ビックリして言葉が出ない。
霧生くんの顔は、街灯と花火の光で怖いくらいキレイで。
花火を見上げて、うっすらと涙を浮かべていた。
その涙は今にも溢れ出しそうで…。
もしかして、冬槻先生を思い出している?
そのまま、何も言わずにしばらく霧生くんの顔を見ていた。
なんか、声を掛けたらいけない気がして。
でも、心配で仕方なくて。
冬槻先生が亡くなった日みたいに。
もし、その涙がこぼれ落ちたら。
また、消えていなくなっちゃいそうで。
「花火、見ないのか?」
「…えっ?…う…うん。」
急に声をかけられて我に返った。
その時は、いつもの霧生くんに戻っていて。
「じゃあ、もう帰るぞ。」
ポイッとヘルメットを投げ渡した。
そして、そのまま家に帰った。
花火を見ながら、霧生くんは何を考えていたんだろう?
花火を見上げた霧生くんが、目に焼きついて離れなかった。