届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
霧生くんからもらった携帯は持っていかれてなかった。
携帯があれば、なんとか尚吾達の状況を確認できる。
その事だけに少し安心して、急いで尚吾に電話してみた。
♪♪~♪♪♪
♪~♪♪♪~
何回も響くコール音。
携帯を握る手が汗ばんで震えている。
お願い!!
無事でいて!!
「唯どうした?」
元気そうな声。
どうやら無事みたい。
…よかった。
安心したら、涙が出た。
それが聞こえたみたいで。
「おい!!なに泣いてんだよ。」
少し驚いた様子だった。
「…ごめん…ごめん。」
何度も謝るしか出来なかった。
「家に帰ったんだろ?お兄ちゃんと仲良くやっているか?」
優しく問いかけるその声で、電話の向こうでいつものニヤけた笑いを浮かべているんだって分かった。
その声が嬉しくて。
「…。」
涙で言葉にならない。
「唯?どうしたんだよ。」
「…助けて。」
思わず口にしてしまった。
出来るはずないのに。
逆にお兄ちゃんに見つかったら、尚吾が危ないのに。
それに、こんな姿を見られたくない。
お兄ちゃんとの関係も知られたくない。
いろんな思いが積み重なって涙が止まらない。
「助けてって…。」
プツッ………
話の途中で、突然電話が切れた。
携帯を見ると充電切れ。
もう助けを呼ぶ事もできない。
みんなは家を知らない。
助けにきたら尚吾達が危ない。
だからもう、あたしはここから逃げられない。
どこまでも汚れ落ちて行くだけ。
尚吾が無事なだけでも、分かってよかった。
電池の切れた携帯を見つめながら、最後の夢の終わりにボロボロと泣いていた。