届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
50 残酷すぎる事実
尚吾が助けに来てくれて逃げられるのが嬉しいはずなのに…。
体が震えて動けない。
うつむいたまま、顔を上げられない。
恥ずかしくて…。
尚吾の顔が見られない。
「今のうちに逃げて。お兄ちゃん多分、宿直かお父さんと出かけたかのどっちかだから。いつ戻ってくるか分からないから。。」
泣きそうな顔をして笑った。
「唯はどうするんだよ?」
「…………。」
首を横に振った。
尚吾は、そっとあたしの頬に手を当てようとした。
パッ!!っと、ビックリして反射的に尚吾の手をかわしてしまった。
「ごめん…あたし…。」
「唯が謝るなよ。」
少し戸惑いながら、口元をゆるめてほほ笑んだ。
「来てくれてありがとう。」
気が緩んだら、また涙が溢れそうになるのをこらえて。
精一杯の笑顔を浮かべた。
「唯も一緒に行くだろ?」
あたしの笑顔に答えるかのように。
尚吾も優しい笑みを浮かべてスッと手を差し出した。
差し出された手を見ないフリするかのように。
スッと視線をそらした。
「あたしは、もう何処にも行く所ないから。」
こんな姿を見られて、やっぱり尚吾と一緒になんていられない。
言葉ではいくらかっこいい事を言えても、現実を見ちゃったら軽蔑するに決まっている。
なのに尚吾は
「ほら、急がねぇと帰ってくるだろ。」
あたしの手を掴んで引っ張った。