届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
51 2度目の脱走
二人で窓から脱走した。
尚吾の手に引っ張られながら、真冬の深夜に裸足でワンピース1枚で。
真っ白い息を吐きながら、ひたすら走り続けた。
凍えそうな冬の深夜なのに、心は温かくて仕方なかった。
尚吾の気持が嬉しくて…。
繋いだ手を伝ってあたしの胸の中に、とめどなく温かいモノが伝わってきて。
心の中が、尚吾の愛情でいっぱいになって溢れ出ている。
手を引っ張ってくれる尚吾の後姿に、涙が止まらない。
痛いくらい伝わる愛情に、あたしの気持ちは不思議な変化が起こっていた。
今までと違って、恋って気持ちにも似ている?
信頼感がそこにあった。
だけど、好きになるのは怖かった。
……失う物があるような気がして。
臆病な自分に負けたのだ。
尚吾が向かった先は、見知らぬマンションだった。
そこは、尚吾の住むビルからひとつ先の駅。
見知らぬマンションにビクつきながらも、力強く引っ張ってくれる尚吾の手に安心感はあった。
マンションに入ると、オートロックの暗証番号を押し、自動ドアが『カチッ』と音がして開いた。
迷いもなくエレベーターに乗ると、15階を押した。
エレベーターの中は、沈黙の重たい空気が漂って。
あたしは、うつむいて尚吾の手を強く握った。