届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
59 裏切り者
ボーッとしながら家に帰ると、玄関には見覚えのある靴と珍しくお姉さんの靴が置いてあった。
仕事休んだのかな?
体調でも悪いのかな?
心配しながらも、もう一つの靴が気になって。
……尚吾の靴だ。
連絡取れないと思ったら、ここに来ていたのか。
顔を合わせたいような?
合わせたくないような?
どうしていいのか分からなくて、そ~っとドアを閉めて、忍び足でリビングに向かった。
ドアノブに手を差し掛けた時。
「いいかげんにしてくれよ!!!!!!」
尚吾の怒鳴り声。
びっくりして、そのまま動けない
「あら、あの子の為だったら、何でもやるって言ったのは尚吾君よ?」
お姉さんと、何かを揉めているの?
…あの子って誰?
「そうだよ!!だけど、これじゃ唯が人質じゃねえかよ!!!」
…えっ?
あたしのこと?
あたしが人質?
何かの聞き間違いだと思った。
「人質なんて人聞きの悪い。」
尚吾とは真逆に、冷静なお姉さんの声。
「人質だろ?!オレが姉ちゃんの言う事聞かなかったら、唯を…アイツの兄ちゃんに渡すんだろ?!」
…………今…何て言った?……
あたしのお兄ちゃん?
引き渡す?
「当たり前でしょ?家出少女は、お家に帰さなきゃじゃない?」
嘘でしょ!?
お姉さんは、そんなこと言う人じゃない!!
この声の人は全く知らない他の人なの?
あたしの知っているお姉さんじゃない…。
それなのに、
「それが出来ねぇから、ここにいるんだろうが!」
否定したいあたしの耳に、容赦なく現実が聞こえてくる。