届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
パチン…
小さな音と共に、冷蔵庫の方から1つの小さな炎が見えた。
「…なに?」
小さくつぶやくと、炎はテーブルの上で止まった。
よ~く目を凝らして見る。
何か、黒い大きな物体がソファに座っている。
「誕生日おめでとう!!!」
その声は尚吾。
「えっ?あたし?」
身に覚えがない。
だって、あたしは11月27日生まれだし。
梅雨に誕生日?
「綾瀬唯が誕生したの、去年の今日だぜ?」
「そっちか!!」
もう、そんなに経つんだ…。
去年の今頃、亮太に偽造の身分証を作ってもらって、『蒔宮紗羽』から『綾瀬唯』に変わったんだ。
そんな事、すっかり忘れていた。
「覚えていたの?」
ビックリするあたし。
「当たり前だろ?だって、大事な唯の誕生日だから。」
照れて笑う尚吾。
グイッ!!!
勢いよく尚吾の胸倉を掴んだ。
冷たくにらみ上げると。
その目には、大粒の涙が溢れている。
「もう!!何かあったのかって、どれだけ心配したと思っているの?」
お兄ちゃんじゃなかった事に、安心して涙が止まらない。
「ごめん。ごめん。サプライズのつもりだったんだけど…。」
苦笑いを浮かべながら、こぼれ落ちる涙を優しく指でぬぐった。
「…バカ!!!」
ドンッと強く尚吾の胸を叩いた。
にっこり笑うあたしに、今度は照れ笑いを浮かべながらソファに座った。
たった1本のロウソクを吹き消すと、ソファの横に置いてあるスタンドライトを尚吾がつけてくれた。
「このケーキ、オレが作ったんだぜ。」
「本当に?」
意外だ…。
尚吾が、ケーキを作れるなんて。
しかも、めちゃくちゃ上手い。
…見た目は。
だから、てっきり買ってきたのかと思った。