届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

それなのに、マジマジとあたしの顔を覗き込んでいる。

「なに人の顔をジロジロ見てんの?」

眉をゆがめながら、男の顔を冷たく見上げた。

「…送っていくから家に帰れ。」

そう言ってタメ息をついた。

「嫌だ。傘もないし、このまま帰ったら雨に濡れてカゼひくじゃん。」

スッと視線をそらした

「じゃあ、ちょっと待っていろ。」

そう言って男はコンビニの中へ入ると、傘を買い足早に目の前に戻ってきた。

「ほら、この傘あげるから。」

そう言いながら、買ったばかりの傘をあたしの目の前に差し出した。

ポカンと口をあけ、男の行動にボーゼン。

あたしの手を取り傘を渡すと

「早く帰るぞ。家はどこだ?」

クルッと後ろを向き歩き始めた。

「…。」

「綾瀬?」

「…。」

問いかけに何も答えない。

男が振り返ると、まだコンビニの駐車場から動いていない。

あたしの足は、ピタリと地面に張り付いたみたいに動かない。

「何してるんだ?送ってくから早く帰るぞ!」

少し大きな声で呼びかけても、何も返事をしない。

ハアッと大きなため息をつくと、男は足早に戻ってきた。

「ほら、傘もあるんだから早く帰らないと、親が心配しているだろ?」

顔を覗き込みながら優しく問いかけるけど、口をとがらせながらうつむいたまま。

サッと傘を男の目の前に突き出した。

「どうした?」

少し驚いたように、差し出した傘を見た。

< 472 / 570 >

この作品をシェア

pagetop