届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「傘なんていらない。」
少し怒ったかのように、ポツリとつぶやいた。
「なんで?」
それでも優しく問いかけてくれる。
「いらないモノはいらない!!」
バンッ!!
傘をその場に投げ捨て走り出した。
だって、家なんか教えられるはずなんかないし。
男は一瞬、戸惑って振り返って。
とっさに追い掛けてきた。
グイッと走るあたしの腕を後ろからつかんだ。
引っ張られた勢いで、あたしの足がピタリと止まった。
必死に振り払おうと何度も腕に力を入れたけど。
どうしても振り払うことができない。
男はしっかり腕をつかんで離さない。
「……!!」
「……!?」
お互いの息は切れて言葉にならない。
「なんで逃げるんだ!?」
両腕をしっかりつかみ声を張り上げた。
「関係ないじゃん!!」
上目使いで男をにらむと大声で怒鳴った。
「関係なくないだろ?」
「うるさい!!」
また必死で男の腕を払おうと腕に力を入れた。
払おうとすればする程、男の手に力が入る。
「離して!!!」
「離したら逃げるだろ?どうして逃げるんだ!」
「あたしに、帰る家なんてない!!!」
あたしの口から出た言葉に驚いたみたいで、腕を押さえる力が弱まった。
その瞬間、男の手を振り払おうとしたけど、もう一度グッと力が入った。
「…家くらいあるだろ?」
「…あたしにはない。」
本当の家なんか言えないし、お姉さんにも迷惑かけるわけにはいかない。
『G』の秘密部屋なんて、絶対に言えるはずなんかなかった。
必死に腕を振り払おうともがいた。
あんなに心に引っかかって会いたかったはずなのに。
会えば何で引っかかっているか分るはずだったのに…。
すれ違えれば良かっただけなのに、急に目の前に現れて。
あたしの中でパニックを起こしている。