届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
素直じゃない自分を抑えられない。
走って乱れた呼吸と、押し問答で余計に呼吸が乱れて。
肩で呼吸しているあたし達。
「どうして?」
切なそうな顔を浮かべながら、ジッとあたしの顔を見た。
「あたしに家があろうとなかろうと、アンタに関係ないじゃん。」
吐き捨てた瞬間、あたしの腕をグイグイ引っ張りながら歩き出した。
「どこへ行くの?離して!!」
暴れて腕を振りほどこうとしても。
強く腕は引っ張られるだけ。
「オレは、お前を家に帰す義務がある。」
力強い言葉だった。
一瞬、あたしの動きが止まった。
「親でもないのに、あたしがどうしようと関係ないじゃん!?」
言葉だけは、感情を抑えきれなくて。
声が荒くなってしまう。
「オレは、少年課の刑事ですから。」
キッパリと男が言い放った。
もしかして、このまま補導されちゃう?
それってマズくない!?
それに、この間のウソの供述だってバレてるかもだし。
…でも、バレてたら傘なんかくれないか。
しばらく2人の沈黙が続いた。
ただ雨が降る音と、時折走る車の音が耳に入るだけ。
グイグイと引っ張られていくあたし。
ズキン…
にも似た?
ドキン…
て感覚が体中を巡っている。
「補導されても、帰る家なんかないから…。」
ポツリとつぶやいた。
「……。」
何も答えず、ただ黙ったままあたしの腕を引っ張りながら男は歩いた。