届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
一度だけ霧生くんに再会できたあの日の夜。
その時も同じ会話して笑っていた。
その晩、霧生くんはまたいなくなったけど…。
懐かしくて苦しくて。
霧生くんが目の前にいるみたいで、思わず海翔の背中に抱きついた。
「おっ…おい。どうしたんだよ?」
ビックリして海翔の声が動揺した。
だけど顔なんか上げられない。
こんな泣きそうな顔なんか見られたくなくて。
ギュッと抱きつくと、海翔は戸惑いながらも優しく抱きしめてくれた。
その温かさは、霧生くんと違って。
包み込んでくれるモノじゃなくて。
ぎこちないものだった。
当たり前だよね。
霧生くんじゃないもん。
霧生くんは死んじゃったんだもん。
パッと海翔から離れると。
「先に行っちゃうよ~。」
笑顔で走り出した。
「は?待てよ。」
あたしの急な態度の変化に、驚いてはいたけど何も聞かず追いかけてきた。
何もなかったようにファミレスに入ると。
当然、あたしが頼むものは決まっている。
だから、いつでもインターホンを押せるように。
人差し指を立てながら。
メニューを決めている海翔を待っている。