届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「はい。ちょっと心配なお話を耳にしたので。前に『G』というクラブで補導された子達がいましたよね?生活安全課の知り合いから、報告書の人数が違うと聞きまして、また、藤友くんが失敗でもしたのかと心配になりまして…。」
脳裏にピンと綾瀬唯が思い浮かんだ。
…帰しちゃったんだ。
「さぁ?あの日は人手不足な上に、数十人をサバかなきゃで。よく覚えていなくて。もしかしたら、記入ミスかもしれないですね。」
シレっと嘘をつく。
言えないよな。
情にほだされて帰しました。
その子は家に居候してます…なんて。
「そうですか。ならいいのですが。」
蔵橋はジッと見透かすような目線で見た。
相変わらず、怖いくらいの冷酷な微笑み。
「本庁さんなのに、そんなくだらない事で所轄まで足を運ぶなんて。気にしなくて大丈夫ですから。ミスはいつもの事なので。ワザワザありがとうございます。」
ニッコリと笑ったのは、イヤミのつもり。
「いえいえ。同期を心配しただけですから。」
コイツが何を言っても嫌味にしか聞こえない。
だから、こっちから立ち去ってやろうと、一礼をしてクルリと振り返った。
「蒔宮紗羽を知っていますか?」
突然、倉橋が聞き覚えのない名前を口にした。