届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
72 失踪
警察署を出て行くと、お姉さんのマンションに直行した。
今夜の補導の件もあったし…。
連絡もしなくて、心配していると思うから。
ピンポ~ン…
「唯ちゃん無事だったのね?」
玄関を開けたお姉さんは、安心した笑顔を浮かべた。
「いちよう。ミュウとかは?」
「大丈夫よ。みんな心配していたわよ?」
「ごめんなさい…色々あって。」
自然と視線はうつむいてしまう。
「いいから入って。」
あたしはコクンとうなずいた。
リビングのソファに座ると、何を話していいのか分からない。
お姉さんは携帯でメールしているし。
どこから話していいかも分からない。
「今、尚吾くんにメールしたから。」
ニッコリと微笑んだ。
「あの…。」
そこから言葉が出てこない。
「補導の件じゃないでしょ?」
ズバッとお姉さんが核心をついた。
「どうして分かるんですか!?」
パッと顔を上げると、目を大きく開いた。
テレパシー?
なんて、あるはずないよね。
「その暗さは、なにか大変な事でも起きたって感じだから。」
相変わらずするどい。
あたしは補導された時、出会った森崎の話をした。
「怖いんです。お兄ちゃんに見つかりそうで…。」
話し終わると、お姉さんは考えているみたいで。
「覚えてないんでしょ?大丈夫じゃないの?女の子なんて、メイクしてれば顔なんて変わるし。唯ちゃんが偽名だって知らないんだから。」
クスッと笑いながら答えてくれたけど。
「でも…。」
何かの拍子に思い出したら?
もし、お兄ちゃんが手を回していたら?
安心なんかしていられない。