届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

「なに?これ。」

目の前に置かれた携帯ショップの袋を指差した。

「携帯だよ。お前持ってないから、何かあっても連絡つかなくて困るだろ?」

「ああ…教えてなかった。」

何かを思い出したかのように悪びれない顔をしながら答えた。

「持っていたのかよ!!」

不満そうに深く眉をゆがめた。

「じゃあ、海翔専用って事で。」

ニコッと微笑むと。

「ん…ああ。」

なんか、まだ納得してない感じ。

だから

『携帯ありがとう(^о^)/~』

早速、海翔にメール送信。

思わずクスッと微笑んじゃう。

心のすき間から、トクン、トクンって。

ポワンと温かいぬくもりが徐々に跳ね上がってくる。

だって…

だって…

だって、これって。

だから返ってくるメールの内容を想像して。

心の中に広がる期待感でチラリと海翔の顔を見てしまう。

『どういたしまして。女の子が遊びすぎるなよ!!』

って返ってきたから。

『うるさい!』

送信すると、向かいのソファに何食わぬ顔して座っている海翔をにらんだ。

「相変わらず、可愛げのない奴だ。」

一人ボソボソ海翔がメールを見てつぶやいた。

嬉しいはずなのに。

どこか切ない感じがする。

今のあたしが持っている携帯。

不思議な事に、死んじゃったはずの霧生くんがくれた携帯。

霧生くんは死んじゃったけど、携帯は友達のだから?

不思議と止められる事はないまま。

その時の出来事が、頭の中で回想されて。

目の前にいる海翔が、霧生くんとダブって見えて。

霧生くんへの感情なんて忘れたはずなのに…。

溢れてくる涙で、海翔の顔がにじんで。

「ど…どうした?」

ビックリして慌てている姿が霧生くんに見えてしまった。

霧生くんは死んだんだもん。

分かっているのに。

一瞬、グッと唇を噛みしめて。

チクッと口元に走る痛みで、自分を現実の世界に連れ戻すと。

「なんでもない。」

笑って涙を拭いた。
< 534 / 570 >

この作品をシェア

pagetop