届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「なに?これ。」
目の前に置かれた携帯ショップの袋を指差した。
「携帯だよ。お前持ってないから、何かあっても連絡つかなくて困るだろ?」
「ああ…教えてなかった。」
何かを思い出したかのように悪びれない顔をしながら答えた。
「持っていたのかよ!!」
不満そうに深く眉をゆがめた。
「じゃあ、海翔専用って事で。」
ニコッと微笑むと。
「ん…ああ。」
なんか、まだ納得してない感じ。
だから
『携帯ありがとう(^о^)/~』
早速、海翔にメール送信。
思わずクスッと微笑んじゃう。
心のすき間から、トクン、トクンって。
ポワンと温かいぬくもりが徐々に跳ね上がってくる。
だって…
だって…
だって、これって。
だから返ってくるメールの内容を想像して。
心の中に広がる期待感でチラリと海翔の顔を見てしまう。
『どういたしまして。女の子が遊びすぎるなよ!!』
って返ってきたから。
『うるさい!』
送信すると、向かいのソファに何食わぬ顔して座っている海翔をにらんだ。
「相変わらず、可愛げのない奴だ。」
一人ボソボソ海翔がメールを見てつぶやいた。
嬉しいはずなのに。
どこか切ない感じがする。
今のあたしが持っている携帯。
不思議な事に、死んじゃったはずの霧生くんがくれた携帯。
霧生くんは死んじゃったけど、携帯は友達のだから?
不思議と止められる事はないまま。
その時の出来事が、頭の中で回想されて。
目の前にいる海翔が、霧生くんとダブって見えて。
霧生くんへの感情なんて忘れたはずなのに…。
溢れてくる涙で、海翔の顔がにじんで。
「ど…どうした?」
ビックリして慌てている姿が霧生くんに見えてしまった。
霧生くんは死んだんだもん。
分かっているのに。
一瞬、グッと唇を噛みしめて。
チクッと口元に走る痛みで、自分を現実の世界に連れ戻すと。
「なんでもない。」
笑って涙を拭いた。