届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

♪♪~♪#♪~

「はい。」

電話に出たのは海翔。

「やっぱり海翔か。」

「なんだよ。なんの用事だ?」

呆れた口調で答える。

「う・し・ろ。」

言われるまま振り向いた海翔。

そこにはあたしが電話をしながら、5mくらい先に立っていた。

「…。」

ポッカリと口をあけ、言葉を失う海翔。

それはまるで、彼女に浮気現場を目撃されたかのような状態。

プツン…。

慌てて電話を切られた。

携帯をポケットにしまいながら、ツカツカと二人の前に歩いてく。

「ダレ?この人?」

不機嫌な顔をして、ジッと女の人の顔を見た。

別に、海翔が誰と何をしてようが構わないけど。

デートしているヒマがないとか言いながら。

ちゃっかりデートしているんじゃん!!

なんか、楽しそうにしている2人にイラついちゃう。

女の人は、少しビックリした顔している。

その隣で、顔を引きつらせてボー然と立ちつくしている海翔。

まぎれもなく、浮気現場を押さえられた彼氏状態。

「誰だろうと関係ないと思うけど。お前こそ何やってんだよ!!昨日も帰ってこないし。」

「イロイロと忙しいの。」

少しトゲのあるように言い捨てた。

「遊び歩いていて、何が忙しいんだよ?」

あたしの生意気な口調に、少し怒っているのかは分からないけど。

ムッと眉をゆがめた。

「何も知らないくせに、遊び歩いているとか言わないで!!」

まあ…言いたくても言えないんだけど。

でも、遊び歩いているとか。

まるで、あたしが男遊びしているみたいに聞こえて。

気分が悪い。

「何も知らないじゃなく、何も言ってくれないのはそっちだろ?」

「言う必要ないから。」

「だったら、遊んでいるいと勘違いされても文句言うなよ。だいたい…」

その先の言葉を突然飲み込んで。

チラッと視線をそらした。

「大体なに?」

「…とりあえず、今夜は早く帰って来いよ。」

何かをこえたみたいに。

急にいつもと変わらない口調になった。

きっと、女の人が一緒だったからだ。

女の人に冷たいとか怒りっぽいとか。

嫌われたくなくて、言葉を飲み込んだんだ。

あたしは言いたいことはまだあって。

言葉にならない怒りをグッと喉の奥に押し込めて。

振り返り歩き出した海翔と、その後を追うように女の人が後を追いかる姿を。

あたしは、それを立ちつくしながら見ていた。

まさか…

朝の『何も知らないと思うなよ?』の言葉と関係があるの?

人に男どうこう言っておきながら、自分だって女と遊んでいるんじゃん。

何が忙しくて、女と遊ぶ暇がないって嘘なんかつくワケ?

胸の中がモヤモヤしている。

苦しいような…

辛いような…

嘘をつかれていたから?

マンションに着くと、もう一度海翔に電話。

♪♪〜♪#♪〜

「なんだよ…。」

電話の向こうの声は、冷たくて少しムッとしていた。

だけど

「鍵。」

いつもと何も変わらない口調で。

たった一言だけ答えた。

< 546 / 570 >

この作品をシェア

pagetop