届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「いいから食べてみてよ!!ほら、いただきます。」
まずはあたしがお箸を持つと、パクリとひと口。
その姿を見て、恐る恐る海翔の箸がおかずに伸びる。
そして、ギュッと目を閉じながらパクッとひと口。
こわばっていた顔が、ゆっくりとほどけていくと
「あの材料で、ここまで作れたのも凄いけど…うまい。」
優しい笑顔を浮かべながら、次々とお皿にお箸が伸びて行って。
しっかり完食。
「ああ!!大事なことを忘れていた。」
急いで冷蔵庫に走った。
「どうした?何を忘れたんだよ?」
不思議そうに海翔があたしの動きを目で追った。
「これ!!」
ドンッ!!と海翔の目の前に置いた缶ビール。
「お~ま~え~!!人が感動しているのに、これって…」
目の前に置かれた缶ビールに呆れているんじゃない。
普通にあたしが飲みかけた缶ビールに呆れている。
「いいじゃん。細かいことは気にしない。」
そう言って飲もうとした瞬間。
「あと3年ったったら飲んでください。」
目に見えない速さでビールを取り上げると、ゴクッと一口飲んだ。
「いいじゃん3年くらい!!」
正確には4年なんだけどね。
…海翔は綾瀬唯のあたししか知らないから。
何だろう。
チクッとだけ胸が痛んだ。
ビールが飲めなかった事とかじゃなくて。
自分は綾瀬唯じゃないってことが。
ズッシリと重たく心にのしかかった。