届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
78 誕生日
それは突然だった。
「なぁ、綾瀬は誕生日に何が欲しい?」
急に海翔が聞いてきた。
「誕生日?」
困惑したのは一瞬。
だって、あたしの誕生日なんてまだ先だけど。
偽物のあたし『綾瀬唯』の誕生日はもうすぐだ。
「何で海翔が知っているの?」
その方が驚きなんだけど。
「補導されたでしょ?データに入っている。」
「そう言うことね。」
嬉しいことなのかな?
でも、海翔が誕生日を聞いてくるってことは。
期待していいってことだよね?
自然と目がキラキラしちゃっている。
「何でもいいぞ。」
「本当に!?」
「常識的なものならな。」
常識的なものって…。
しばらく考える。
「花火がいい♪♪」
ニッコリと笑って、元気よく答えた。
「花火って…。」
海翔の眉はゆがんで、首をかしげた。
「常識的なものでしょ?」
「常識的か?一発いくらだよ。」
「あはははは。」
お腹を抱えて大笑いした。
その姿にムッとした顔を浮かべながら。
「なんで笑うんだよ。」
「夏に約束して、まだやってないじゃん。普通の花火。」
「ああ…。普通の花火か。」
「それ以外、何があるの?」
「てっきり、打ち上げ花火かと思った。」
必死に笑いをこらえるあたし。
普通は花火って言って、打ち上げ花火を想像しないでしょ?
海翔はもしかしたら天然!?